GRJ日記

サイトの日記代わりです。やや古いマンガやや古いアニメやや古い特撮(略)大好き。

ピンキーは二度ベルを鳴らす

ヤクザ漫画です。基本一話完結。
誰でも一度は読んだことがあるタイプの話です。ちょっと特徴的なヤクザが主人公で、子供のいるキャバ嬢、混血の売春婦、売りをやっている女子高生などそれぞれヤクザに搾取されていたりDVを受けていたりするが、最後には主人公のお陰で事件が解決して前へ進める。といった話です。ねッ、読んだことあるでしょう。
主人公はひどい目に遭っている女たちに同情的ではなく、むしろバッサリ切り捨てる方向で、言葉は哲学的でイカシてておしゃれ。好きな男が山ほど借金を抱えていて、そのために身を売って金を稼ぐ女にする石投げ刑の話はなかなかぐっときました。とある国で石打ちの死刑を実施しており、残酷だからとの声があり投げる石を小さくした。それは残酷ショーの時間を長引かせるだけのことだと。お前が好きな男にしているのはそういうことだと。
いつも三つ揃いをピシッと決めていてオールバック、顔は眉なしのピッコロ目で鼻がたくましい、白人ぽいイメージの顔です。
さっき「ちょっと特徴的なヤクザ」と書きましたが、作品によっていろんな特徴でキャラクターに色付けしてあると思います。マザコンだとか。オタクだとか。虫が嫌いとか。結構な数の特徴っぷりをあなたもいろんな漫画で見てきたと思いますが、この主人公の特徴は出会ったことがないだろう。


彼は人から「かわいい」と言われるのを嫌う。「かわいい」というのは「かわいそう」から来ている。それは侮辱だからだと。レストランで食事している時にバカな一般人が彼を嗤った時、きっちり報復するし。ただ中に出てくる顔馴染みの女が一回、彼に対し「かわいい」と言ってるんだけど、それには報復しないんですがね。それは何でなのか。ちゃんとした理由があるのか作者さんのうっかりか。これだけ主人公のポリシーだの信条だのを押し出している漫画なんだから、うっかりは止めて欲しいな。
彼は生まれた時に成人する前に死ぬだろうと言われたので父親には見捨てられ、虐待された。でも母親が頑張って愛情深く育ててくれたそうです。この身の上話はウソだろうか。多分ウソではないだろう。父親に押し付けられた煙草の痕が実際にあるんだから、彼を庇った母も実在するんだろう。彼が基本的に、苦労してる女に根底で優しい理由はこの辺からも来るのだろうな。
彼はそこそこ女にもてて、女とウフフなことをしたりもする。そうか、出来るのか、と私は不遜にも思いました。なかなかいいことも言ってたね。俺は惚れた女は抱ける。軽蔑する女も抱ける。でも尊敬する女を抱くのは難しい。わたしゃ男じゃないのでアレですが、わかるような気もする。
善悪の屑とかだと、女たちをひどい目に遭わせてるやつらをいかに苦しめて殺すか、の部分が見せどころですが、この話ではその部分はいともあっさり処理されています。そこは気に入った。ただ、出てくる女は必ず良い役で、男は必ずろくでなしというのが単一的だなあと思った。彼の持っていないものを全部持っているDIO様みたいな男との戦いとか逆に友情とか、男気があって豪胆でどすこいな承太郎みたいな男との戦いとか逆に友情とかも見たかった。
彼の得物は硫酸の入ったガラス管である。彼の特徴からいって肉体をつかった格闘は不向きです。あくまでも頭を使って相手を罠に嵌める方が得意。銃も一度だけ使ったけど好きではないそうだ。でもちゃんと使えるあたりがイカス。彼に救われて以後ボディガードをしている聾唖の男との関係も良かった。
彼の名前はピンキーというのです。当然、自分で名乗ってるんだろうが、なぜピンキーなのだろう。その理由を訊いてみたい。愛情深い母親に育てられ高校も出て、どんなふうにこの職業に就いたのか。ここまでの彼の半生を知りたいですね。そう思わせるキャラクターですが、敢えて見たくない気もする。今現在を生きて、不幸の中から必死で抜け出そうと頑張る女たちに手を貸してくれる、かっこよくてイキで自分の特徴なんか単なる個性(by愚地克巳)にしてしまうヤクザの生き様をもっと見たい。

 

さんざん引っ張ってしまったので彼の特徴がどんなものであるか今更言えないのですが、機会があれば読んでみて下さい。面白いです。