と言って驚いていたペッシですが
てことは、今まで、兄貴はあの「自分自身を老化させて誰かを騙す」という一連をかつて一度もやったことがないということだよね。
それはちょっと違うんじゃないですかね。ああいう能力の人ですよ。暗殺のために使える方法は結構限られている。やり方を間違えたら不審死体製造人です。だって老化させて殺してしまったらもとの年齢には戻せないんだから。DNAや血液などから、この死体がどこの誰だということがはっきりしているのに、なぜか年齢の合わない老人となって死んでいる。もう警察の記録に残りまくりだね。
だからきっと、尋問とか脅迫に使う他にも、ああいった使い方もして、油断させるとか限られた場所に入り込むとかに利用していたと思うんだよ。
まあなんたって、兄貴の服を着ているじじいだよペッシ。いくら慌てていたってそこには気づかなくちゃ。「そうだぜペッシ」「う、うん、そうだねアニィ」「そうか?」
そしてまた
ブラックジャックにキリコという、希望者には金をもらって安楽死させてやる男が居ますが、あれと同じことを兄貴はしたことがあるだろうなと思った。もうあとは苦しむだけの難病。機械に繋がれてかろうじて生きている。もう充分に生きた、自分が出来ることは全てやった。これをしなければ死ねないと思って歯を食いしばって生きてきた目的をし終わった。
死なせてくれ金髪の死神よ。報酬はスイス銀行の、ゴルゴ13の口座番号に1を足した番号だ。
とか言われて、その相手に恩義があったら、兄貴は殺してやるのかも知れない。
その前に兄貴は人の恩義を感じてそれに報いる人間だろうか。
そうではないという説もわかる気はする。彼はプロの殺し屋です。人とは全て、殺す対象か、そうでなければ、とばっちりで死ぬ群像のどちらかに分かれるとしか考えていないかも知れない。親でも子でも恩人でも眉も動かさず殺すのかも知れない。それを後悔もしなければ思い出しもしないのかも知れない。
私個人としては、ペッシをあんなふうに見守った人なんだから、真摯な情熱とか、心意気とかいったものに感じ入る部分がある人だと思いたい。気まぐれにだとしても。そうね、ペッシのことで助けられた相手だとかなら。
「…!きみは…」
「礼はいらねェ。弟分が世話になったからな」
「………ありがとう」ガクリ
「兄貴!ここに居たんですか、あれ、誰ですこのじいさん。?見たことがあるような」
「いいから行くぞペッシ」
「へい」
的な話があったかも知れないね。
と、さんざん良い話ふうに言っていますが、もちろんキリコのやり方はブラックジャックは否定し、どんなに生きることがつらく厳しいことでも、人は自ら死を選んではいけない(し、その手伝いをしてはいけない)というスタンスです。
どうなのだろうか。
そんな簡単に結論の出ることではない。
私の知人に、大好きな人を失って、自分の残りの人生は長いおまけだ。自殺したらいろんな人に迷惑をかけるからしないが、毎日思う事は「早くあの人のいるところへ行きたい」ということだけだ。何かあって、生きるか死ぬかの選択肢を迫られたら、迷わず死ぬ方を選ぶ。
という人が居て、
そういう生き方は、生きたいのに病気等で死んでしまう人に悪いと思うとか、生きているうちに新しい生き甲斐が出来るかもよとか、軽々しく言う気にはなれず、「そうですか」とだけ言いましたが
そのあたりは、人ぞれぞれだ、と言うしかない。
その考えを否定したり、説得して考え直させることは、他人には出来ないし、することでもない。
ペッシは
あのあとすぐにブチャラティにやられて死んじゃったけど、もしも生き残ったら、ビーチ・ボーイから一人分の重さが無くなった瞬間のことを何度も何度も思い出すんだろうな。
それこそ、兄貴を死なせたおいらが生き残るなんておかしい、と思うだろうけど、でもきっと、今死んだら兄貴に怒られると思って踏みとどまるんだろう。そっちの方向から死を思いとどまるだろう。
ギャングの人生のどこかで死ぬ羽目になった時に、今なら兄貴に誉めてもらえるかな、と思うんだろうね。
せっかくうまく助けたのになあ。兄貴にも「よくやった、気が利いたな」って誉めてもらえたのに。気が利いたって言い方がいいよね。
まあそれはそれとして、5部の撮影が終わった後のポルに「5部の衣裳の俺もかっこいいだろ?」とか言われて「そうだな、はかなげで美しい」とうなずいて「今夜はこのコスチュームを着たままで」とか言い出して護衛チームのひんしゅくを買う、とかはどうですか