GRJ日記

サイトの日記代わりです。やや古いマンガやや古いアニメやや古い特撮(略)大好き。

ポアロさん

誰もが一度はアガサクリスティものを読む時期があると思います。ずーっと読み続ける人とある程度読んだ後読まなくなる人とに分かれると思いますが。

クリスティものと言って最初に出てくるのがあの圧倒的な容疑者の数ね。よく本の見返し?そで?の部分に登場人物が書いてあるじゃないですか。あれがもうぎゅうぎゅう詰め。満員状態。ごましおみたいに延々書いてある。一番下が探偵の名前ですかね。一番上が最初に殺される金持ちね。

あの容疑者のボリュームに毎回ウットリしていた気がする。覚えるだけで手一杯な。映像化すると数人は端折られたり、あるいは2人の素性を合体させて1人にしたりしていたっけ。

クリスティの探偵で一番有名なのはやっぱりエルキュール・ポアロだと思う。コナンドイルがホームズを書きたくないのにファンと編集に書け書け言われて仕方なく書いてたみたいに、クリスティもポアロのことはうんざり気味だったそうですが。でも私もポアロさんは好きです。滑稽な外見、とんでもなく巨大な自尊心。キザでおしゃれで、アクションは無し。あくまで頭脳。態度は丁寧で礼儀正しく、相手を詰ってる時でも言葉使いは綺麗。でも好かん奴に対する言葉は痛烈で皮肉たっぷりで容赦ない。ベルギー人で、時々フランス語が混ざる。それがまあかっこいいのよ(笑)

ナイルに死す、なんかでは、犯人に対して同情したり、親身になって話しかけていて、その時はとても優しくてダンディでおとな。あとメソポタミアの殺人で、ワトソン役をしているリスラン看護婦が目の前で被害者に死なれて絶望しているのを慰め励ましてくれる仕草がとても頼もしくて、「女だって彼ほど優しくはなれないだろう」っていうくだりを覚えています。その、彼独特のやさしさ、頼もしさは、見た目のかっくいー名探偵にはちょっとない。誰かも持ってたなと思って考えたら、コロンボ警部ですね。あの人も、殺しの序曲だったかしら、天才ばっかりが入れるクラブがあって、そこの一員の、頭いいことだけもてはやされてきたけど、可愛いなんて言ってもらったことのない女の子(確かでっかい黒縁メガネじゃなかったか?)に、「君は頭がいいだけじゃなくてとてもかわいくてきれいだ」と言ってあげるコロンボ。それに対して、「頭のことじゃなくて外見で褒められたのは、これが初めて」と言って笑う女の子。ぴゅっと走っていってしまう背を、しみじみと優しい笑顔で見送る。あの顔がとてもおとなの男で、すごくステキだったのです。それと通じるものがありますという話。

上で上げたナイルに死すとメソポタミアの殺人はどちらも大好きですが、よく「トリックに無理がありすぎる」「読んでがっかりした」とか言われてます。うん。殺人のトリックはちょっと無理がある。認めよう。イチかバチか過ぎる。どこかで誰かひとり見てたらアウトの綱渡りざんす。でも、話全体の雰囲気、それこそ山のように出てくる容疑者たちが織り成す人間模様、どんな脇役でもその人の人生があり、これまで生きてきた背景があり、胸にたたんできた思いがあるのだなーと思える描写力こそが、魅力であると思います。ので、大好きです。オリエント急行殺人事件も良かった。

オリエントとナイルの映画を大昔観ましたが、それらも良かった。もう一度観たいな。

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