GRJ日記

サイトの日記代わりです。やや古いマンガやや古いアニメやや古い特撮(略)大好き。

風子のいる店

今日は

「風子のいる店」

寄生獣を描いた岩明均さんの作品です。

それと、山田芳裕さんの「しわあせ」の話の時に

岩明さんはストーリーを作ってそれに沿ってキャラを作るタイプなので、逆の時にえらく苦労したそうだという話をしたのですが、その、キャラクターから先に作ったので苦労したというのがこの作品なのですって。

主人公は風子ちゃんという高校生の女の子で、やや引っ込み思案で大人しくて緊張すると吃る。そのため心ないクラスメートや教師に傷つけられ、つらい思いを抱えている。でもなんとか上がり症や吃音を治したくて、小さな喫茶店のウェイトレスをすることになった。その喫茶店や学校での、いろいろな人々とのいろいろな話です。前に出てきた人物がまた出てきたりはしますが、基本、一話完結です。

確かにこれはキャラクターがまずあってその組み合わせや出会いによって話が動いていく作品です。苦労したのでしょうが、しかし、キャラは実にリアルで「こういうタイプは必ず出てくる」「こういうのが居て、こうなるのがパターン」という類のことは一切なし。とにかく、良い人の役割の人、良いだけの人、は居ない。誰もが必ず、好感の持てるところと、醜く嫌な部分がある。それは現実世界なら当たり前のことですが、創作物で、ごく自然に当然のようにひとりの人間の中にそれらの性質が両立しているって結構すごいと思う。風子ちゃんの親友でも、恋人でも、そして彼女自身でも、いいところと駄目なところの両方を持っている。その駄目なところっぷりが、マンガ的にいかにもな欠点の「お節介焼きでついつい出しゃばってしまう」「熱血漢で、おっちょこちょい」というふうな、据わりのいい耳障りのよい欠点ではなく、読んでいて不快になるとか、ぎょっとして引くとか、つまりは現実に存在している相手に対して抱くような感情を持つのです。

風子ちゃんが尊敬している年上のウェイトレス、頭がよくて力持ちで心が優しく、そして見た目がウシのような巨漢の女性。彼女が好きな相手のためにせっせとレポート書いてあげて、彼も「ありがとう、頼むよ」なんて言ってるんだけど彼女がいないところで彼女をバカにして笑っている話、痛かったなあ。風子ちゃんの怒りは読んでいて嬉しかったけど、結局、あのひどい男に天罰が下るわけでもなく、ウェイトレスさんの目が覚めて「あんなバカな男に入れあげちゃだめだ」と思い直すわけでもない。でもそれが現実なんだよなと痛く切なく思い知りました。

あとマスターの知り合いの絵描きさんの話とか、なんとか名前を売り出そうと必死で頑張る装丁屋さんの話とか、とにかくヒリヒリと身に沁みる話が多々あります。

地味で、これといったスペクタクルはありませんが、パターンをなぞっただけの冒険活劇の10倍面白いです。

先日アップしたクーガですが

紛らわしいというか、ちょっとウソを書いたので一言謝っておきますね。イチジョーさんの出身は長野ではないのです。所属は長野県警だったというだけ。子供の頃におばあちゃんから毒キノコの煮方を習うことは、本当はできませんよ。失礼いたしました。

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