GRJ日記

サイトの日記代わりです。やや古いマンガやや古いアニメやや古い特撮(略)大好き。

しわあせ

今日は

「しわあせ」

山田芳裕と言えば「へうげもの」「デカスロン」あたりが一番有名でしょうか。

私は「考える侍」「度胸星」が好きですが、この「しわあせ」も好きです。

時代は近未来。科学が進んで、月旅行に一般人が行くようになっている頃です。

なによりこの頃には、どういうことなのか悪人がひとりも居ない、健全な世界になっている。秘密クラブでは囲碁を打ち、夜の街でポン引きに誘われて入った店ではフォークダンスをやっている。

そんな世界で主人公のじいさんだけがヤサグレていて、ひねくれきっている。息子一家と一緒に暮らしていて、明るくてのほほんと平和な周囲に当たり散らしてるんだけど、それさえもニコニコと迎えられ受け入れられてしまって、もうやってられない。毎回なにかしらアナーキーな態度で臨むんだけど、結局いつも親切で健全な社会に敗北してしまうのであった。

でも当然、腹の底から平和な周囲を嫌悪しこんな世界滅べばいいと思っているわけでもなく、脳天気な息子一家を大切に思う気持ちはもちろん持ってるんですが、それを臆面もなく大声で表現できない照れとか慎みってものがある。そのあたりのさじ加減が良く、セクシーです。

一応近未来なので宇宙船に乗って月に旅行するんですが、船や宇宙ステーションにレトロなムードがあって、こんな未来ならいいなあと思いました。

このじいさんはちょうど80年代のトレンディでバブリーでスタイリッシュでボディコンワンレンでジュリアナでハウスマヌカンで色つきスーツに肩パットでカッコいい事至上主義な世相の頃に青春を送った人で、若い頃の思い出を見るとなんとも気恥ずかしくなる。いやー、眉毛太いなあ。カチューシャしてるんだよね(笑)

そしてそのじいさんの、「健全なことを大声で叫んで満面の笑顔」に対する恥ずかしさって、あの時代の斜に構えたスタイルとだぶるんですね。

最終回ではじいさんがうたた寝しながら若い頃のこと、先に死んだばあさんとのなれそめを夢にみている話なんですが、なんか最後に首や手が垂れて「じいちゃん、よく寝てるよ」って言われてるんだが、ひょっとして逝っちゃったんだろうか。そういう意味なのか?切ないのでそれは却下したい。まだまだ頑張って、生きにくいこの時代でひとり汚い言葉を吐き散らしていって欲しい。

SFといえば、

度胸星」をずーっと探していて、最近やっと読めたのですが、面白かった。未完でブチ切られてしまったのですが、惜しいなんてものではない。本来、この先どんな展開を迎え、あの謎がどうやって解ける筈だったのか、読めないことが残念でなりません。

作家さんには、キャラクターを作ってからそのキャラが動いて話が出来ていくタイプの人と、話をつくってからその上で必要なキャラクターをつくる人とが居ます。前に話をした寄生獣岩明均さんは後者の人で、前者の作り方をした漫画の時にとても苦労したという話をしていました。

山田芳裕さんのキャラの濃さ、キャラに込められた熱量の大きさからいうと前者の人なのかなあと思っていましたが、でも度胸星のストーリー展開を見ると後者なのかなあ…わかりませんが。

ずぅーっと読みたくて探していた「ふたつのスピカ」が見つかったので大喜びです。これからあのブックオフに通うぞう。買えって。

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