GRJ日記

サイトの日記代わりです。やや古いマンガやや古いアニメやや古い特撮(略)大好き。

クライマー列伝

今日は

「クライマー列伝」

村上もとか先生の、山に登る人々を描いた作品です。全2巻。

一話完結ですが「この話のこの男は、こっちの話のこの少年」という繋がり方で時々出てくる人々がいます。現地ガイドの一族。その中の一人のプルバという男はとんでもない体力と胆力の持ち主で、第一話からしてものすごかった。

エベレストに挑戦する数カ国連名の精鋭チーム、だが突然の悪天候で山頂を目前にして動けなくなってしまう。この回の主人公である男と現地ガイド残してほかの全員が落命する。

雪に埋もれた仲間たちの死体を前にして

「俺の命はもういくらも残っていない。このままテントの中で凍え死ぬのはイヤだ、だが山頂を背にして降りながら死ぬのはもっとイヤだ。俺は山頂を目指す」

と言う。その意気に感じて、ガイドは彼とともに山頂を目指すのであった。

しかし途中で、先に登るガイドが振り返って呼んでももう応じなくなる。ガイドはしばし佇んでから彼のもとへ戻り、そしてガイドは、「まだ終わってないんでさあ、俺の仕事は」と言い、主人公の体をかつぎあげると山頂まで登るのです。その時の心の声が

「山は俺を稼がせてくれる場所だ。山で仲間が死んでも、それを山のせいだなんて思ったことはない。だが今俺はこんなバカなことをし、そして生まれて初めて山を憎んでいる」

山頂にたどり着きゴーグルその他を外すと、主人公は笑顔で死んでいる。「旦那の魂は俺より先に山頂に登っていたんだな」と呟き、彼と二人並んで山頂で写真を撮る。

そしてガイドは奇跡の生還を果たす、というところで終わり。

このガイドがすごすぎて、この人だけ見れば山頂なんて何度も行ってんだよなと思う(笑)人をかついで登頂って…

どの話も全て、明るい楽しいスカッと登った!な内容ではありません。崖から落ちて死に、クレバスに落ちて死に、雪崩に巻き込まれて死ぬ。目の前で家族が死に、好きになった人が死ぬ。

私はそうまでして山に登りたいとは思わない。ピクニックとか、ハイキングで行ける高さで充分です。何故、そうまでして山に登りたいのか。「そこに山があるから」とかいう言葉は聞きますが、全然納得できない。

で、中の話に

二人でザイル結んで登頂を目指している。一人が滑り落ちて、その体重でもう一人も身動きが出来ない。ここでザイルを切れば俺だけは助かる、とチラリ思って見ると、滑り落ちた方がナイフでザイルを切って、自分は落ちようとしていた。それを見てはっとして、バカ野郎、近くの壁にとりついて体重を移せ、と怒鳴る。そして

「山は、人が生きるために最大限の努力をするところだ」という心の声が出てくるのですが、その辺りだろうかなと思います。大きくて無慈悲で美しい自然の前で、自分の持てるすべての力を振り絞って、立ち向かい、己の命を長らえる。その充実感にとりつかれたら、社会的に成功するとか、愛しい妻と娘がいるとか、そういったものでは満たせはしないのであろう。

最終話はまさしくそういう欲望にとりつかれた男たちの話です。K2という山に挑むのですが、登りにくさでは世界一なんだって。「非情の山」という呼び名や、「この上は地獄だ」と言い捨てて撤退していった隊がいるとか、かっこいいなあK2。厳として人を拒むものってかっこいいよね。

もう少しで山頂というところで下に控えている隊から、君たちは高いところに居すぎたから登頂は諦めろ、交代だ、と言われる。もう結構ベテランの年齢の人ばかりで、今までやり残してきたことの数々が今も胸でうずく。「今回ばかりはちょっとやりすぎてみたいんだ」と言い放って、お互いをつないでいるザイルすら外して、おのおのたった一人で山頂を目指す。で、見事登頂し、下へ降り始めたところで、雪崩が来る。全員が口の端に笑みを浮かべて、岩陰に身を押し込む。「俺たちは、ほんの少しやりすぎてしまっただけさ」

最後は美しく恐ろしいK2の姿で終わりです。

人間は巨大で美しく恐ろしいものの前であがくちっぽけなものだが、その全力のあがきっぷりや良し。シリーズですね。宇宙やら山やら。

ところでジョジョ、アップしました。

良かったら読んでって。

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