今日は
「009ノ1」
石の森章太郎先生のスパイ漫画です。
サイボーグ009とは無関係。
舞台はまだ東西ドイツや米ソの冷戦があった頃の世界です。ゼロゼロナインワンと読むのですがクノイチとかけてもいる。女諜報部員ですね。
センスのいい会話や眉も動かさず相手を殺すハードさやスパイ稼業の非情さ、クールに描かれるセックス描写など、60年代のおしゃれで大人な青年漫画です。
一話完結の短編連続漫画なのですが、中に二つ、忘れがたい作品があります。
一つは
荒野にぽつんと建つ豪邸に、こちら側と敵側のスパイが入り、それを追ってもう一組が入って、それきり誰もでてこない。今度は主人公が調査に行く。
その館は異次元につながる建物で、異形のものに捕らえられ実験動物にされているスパイたちの姿を見つけた主人公は大急ぎで脱出し、逃げて逃げてやっと振り返ると荒野の豪邸はなくなっていた、という話。
あらすじを書いてみると、現在ではよくあるありふれた話ですが、彼女が味わっている恐怖、「一刻も早くもとの世界に戻らなければ」という焦燥が、本当にありありと読んでいるこちらに迫ってきました。自分も同じ目に遭っている臨場感があった。怖かった。館に閉じこめられて一人一人殺されてゆく話より怖かった。
もう一つは
ニュータイプ、新人類、のエスパーである子供が、こちらの悪意に反応して反撃してきて皆倒される。悪意を持っていなかった主人公だけが生き延びるという話なのですが
この話を忘れがたいのは内容のためではなく
最後の一枚絵が、
北欧系の夜空なのですね。針葉樹林の山、山頂に大きな月、満月だったり、月と太陽の比率がちょっとおかしい三日月だったり。夜空は明るくて黒でなく青色。わかるでしょう。そういう絵を、必ずどこかでみなさん見たことがあると思います。
私はなぜだかそういう絵に非常な、異様なほど郷愁をおぼえるのです。別に北欧に暮らしたことはないし両親もその両親も日本人ですし寒いところは苦手ですし。
でもそういう絵にひどく、ものすごく惹かれる。東山カイイさんの絵にもあった。幼児期にムーミンや北欧神話の絵本で見たのが刷り込まれたのかなと思いますが。
で、009ノ1というとその絵を思い出し、すごく懐かしい思い、ちょっとつらいくらいの懐かしさを味わうのでありました。
で
北ゴロ、アップしました。
そっちのサイトの方、良かったら読んでって。
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