GRJ日記

サイトの日記代わりです。やや古いマンガやや古いアニメやや古い特撮(略)大好き。

クレイジーピエロ

今日は

「クレイジーピエロ」

マイナーです。きっぱり

高橋葉介氏の漫画。「夢幻紳士」とか「学校怪談」とか描いた人。わかりますか。

夢幻魔実也はしびれるキャラですね。私はドタバタ冒険活劇のちんちくりんの子供っぽい夢幻君ではなくて、怪奇編の艶やかで容赦ないオトナの夢幻君の方が好きです。あと高橋氏のもっとも初期の頃に描かれた夢幻君ね。

あの絵は独特だったね。朝日ソノラマでずらーっと高橋氏の漫画が並んでいた頃が懐かしい。私はSFマンガ競作大全集の豪華版「腸詰工場の少女」を持ってたんだよ。すごいでしょ。

老人の繰り出す謎の呪文でした。

で、クレイジーピエロですが

場所は外国らしきどこか。戦時下。敵に占領された村や町で、軍によって様々な残虐行為が行われていて、人々は楽しみのためや囮としていとも簡単に虐殺されていく。そんな中、ピエロの格好をして大刀を引っ提げた人物が現れる。

彼は、捕まっておもちゃにされている少女ひとりを助けるために十数人の兵士をいとも簡単に斬り殺す。一見、弱者の味方の英雄みたいですがそうではなくて、彼は事態の収拾とか解決なんてことは考えておらず、ひたすら自分の怒りを殺戮という形で爆発させるだけである。彼が去った後には死体の山が残るだけなのだ。

1話でピエロに助けられたおじさんが「一人の力ではなにも変えられやせん」と言うとピエロは、

「そうかもしれない だが…

おれはクレイジー(きちがい)だからな、そんな道理はわかりゃしないのさ

おれはただ目の前の敵を殺すだけだ

殺して殺して殺しまくるのさ

かたっぱしから地獄へたたっこんでやるのさ」

と言う。これが彼の行動原理であります

全3編で、前の2編は戦時下のピエロの戦い、最後の1編はピエロがどうして生まれたのか、その事情についてです。

そして最後の話で、戦争が終わったこと、町には平和が戻ったことがわかります。しかしその町に向かってピエロは出てゆく。そしてナレーションが

「さて これからクレイジーピエロの伝説ははじまるのだ」

そこではたと、敵に占領された村でのピエロの殺戮は、ある意味「ありふれた行為」と認識していた自分に気づきましたね。しかし平和な町で、女の子を追いかけ回すストーカー、酔っぱらって絡んでくるオヤジ、点数稼ぎのため言いがかりをつける警官、そんなものをかたっぱしから血祭りにあげるピエロの姿をした殺戮者。実際にそういうシリアルキラーが居そうだな、と誰でも思いますよね。

最後の話でピエロは自分を生み出し、また封じ込めようとした老婆を人質にされ、いとも平然と見殺しにする。そして、瀕死の老婆に

「行くかい しかたないね…

お前は一体何者なんだい」

そう言われて見せる表情が、不動明王のようで、怒りをたぎらせているように見える。その怒りは、

老婆を殺されたことに対してのような、自分を作り出されたことに対してのような、自分を封じようとしたことに対してのような、そしてこれから抹殺してゆくこの世の全ての悪に対してのような、様々な想像を駆り立てられる表情です。

まあここまでで想像がつくと思いますが、全編、血と臓物と死体の山とさまざまな殺され方のデパートです。その手が苦手な方には決してお薦めできません。

でも、読んだ後残るのは、血生臭さではなく、何ともいえない寂寥というか、荒涼とした冷え冷えとした寂しさです。そしてどこかすがすがしさと、懐かしさを感じるのです。

今現在は読む方法はあるのかな…

機会があったら、そして読んでもいいと思ったら読んでみてください。

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