今日は
「うしおととら」
メジャーなんだろうか?
これよりマイナーな漫画はいくらでもあるが、メジャーと言ってもいいかとなると…
同じサンデーでも高橋留美子氏やあだち充氏の作品だと、あまり考えなくてもメジャーだと言ってしまって間違いないんでしょうがね。
主人公はどこにでもいる中学生の蒼月潮と、彼の家の蔵に閉じこめられていた一匹の妖怪であります。うしおはその妖怪に「とら」という名を付ける。とらはうしおを隙あらば食ってやろうとするが、うしおの手には妖怪を駆逐する「獣の槍」があり、そう簡単にはいかない。
というのが冒頭部で、それから二人は様々な戦いや出会いと別れを乗り越えてゆくのです。
この物語は、キャラクター立てがとてもしっかりしていて、またそれと同時に話の積み重なり方、構築がきっちりと組んであります。場面を盛り上げるためとか、単に悲劇にして涙を誘おうとか、そういった薄ーい理由でキャラを殺すことをしない。丁寧にじっくり、キャラを掘り下げて、周囲を固めて、そのキャラこそが取る言動をとらせ、それによって状況が変化していく。
最終決戦の中、今まで出会った人たちがそれぞれの形でうしおととらを助けてくれるのですが、それはなんだか、自分たちを丁寧にきちんと作ってくれたから、作品や作者や主人公に恩返しをしているように思えました。
なんといっても、とらがものすごくかっこいい。ナンバーワンの強さを誇る大妖怪であり、さまざまな技を持ち、なんでも知っていて、情容赦なく敵を殺すんだけど、現代日本のことはよくわからなくてガラスや女の香水にひどい目に遭ったり、てりやきバーガーがうんと気に入ったりする可愛らしさもある。
そして最初はただの食い物にしか思っていなかったうしおと、いつしか強く結びついてゆく。その過程が、再度繰り返しますが、丁寧にじっくり描かれています。
うしおが、自分のせいで人に死なれてショックを受け腑抜けになってる時、うしおを奮い立たせるために取る態度がまあ、すごい。憎まれ役なんてかわいいものではない。憎まれ役なんてものではない、と言えば秋葉流との戦いね。うしおのことが可愛いけど憎い、彼の鬱屈や絶望を理解し、全力で戦って倒してやることで彼の気持ちに応えてやる。結果うしおに心底憎まれることになってまで。
あの漢気は、ハンパなヤクザの比ではないです。
ヤクザと言えば、ガンをわずらったヤクザも泣けたし、なんといってもサトリには泣かされた。かまいたちの次男にも泣いたし、なによりもヒョウさんの最期は、何度読んでも涙が止まらない。ホントに。凶羅にもぐっときたし、九印にも泣いた。いやもう。いちいち語ったらきりがないです。
藤田和日郎先生の使うテクで、戦って勝った時にキメ台詞、というものがあります。例:「おまえはそこでかわいてゆけ」「あなたの山にお帰りなさい」「おめえがノロマだからさ」
うしおととらではまあだいたい決まっていたと思う。次の作品の「からくりサーカス」になると、うざったくて鼻についてしょうがなかった。個人の感じ方でしょうが。
OVAにもなったんですがとらの声が大塚周夫さんで、もんのすごく嬉しかった。ジョセフの声が大塚周夫さんだった時と同じくらい嬉しかった。あれ?
ブックオフにふらっと入って時間がある時、是非読んでみて下さい。
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