GRJ日記

サイトの日記代わりです。やや古いマンガやや古いアニメやや古い特撮(略)大好き。

海難1890

数年前の映画です。日本とトルコの合作映画。

明治の頃、トルコの親善使節団が日本にやってきて、帰り道に台風とぶつかり、和歌山の沖で座礁し大破する。海岸の小さな村の人々が大急ぎで駆けつけて、嵐の中怪我人を必死で救助する。600数名中助かったのはわずか70人弱という大参事で、でも助かった人たちは心から感謝して帰っていく。それから100年近く経ってイランイラク戦争の真っただ中のテヘランで、もうすぐ無差別攻撃が始まるという時、孤立してしまった日本人がなんとか飛行機を飛ばせてくれと日本政府やJALに掛け合うが「危ないから」「なかなか認可が下りないから」飛行機が飛ばない。他の国の飛行機も自国民で手一杯で日本人の面倒までみてくれない。そんな中、トルコの飛行機が…という話。

出てくる人誰もが自分の持ち場を懸命に努め、務めるタイプの人たちで、見ていて気持ちが良かったです。こまごまとした設定があって、まあ正直見たことのあるアレ(故郷で子供が生まれた、と喜ぶ→死亡フラグとか)なのですが、ちゃんと活きていました。忽那ちゃんの事情とかも。内野せいようもさりげなくて『良い人振り』を押し付けてこなくて良かった。あと「貧しくても正直でまっとうで、目の前で苦しんでる人がいたら全力を挙げて助ける、なにもしなかったらご先祖様に申し訳がない」という庶民の姿は、見ていて背筋が伸びるし、こういう「優しい常識が生きていた頃っていいものだな」と思います。あとこれも時々見かけるけど、身体が冷え切っている人たちを、芸者さんが自分らの仕事だと言って体で温めるやつ。かっこいいですね。身体を張った心意気ですね。イカス。ちらっとだけ出ていた竹中直人も良かった。一見イヤなやつ、やっぱりイヤなやつ、ホントイヤなやつだ。でも…!という辺りのさじ加減がニクイ。

そして、機関室で働く男と、主人公の士官とのレスリング戦、そして夜の甲板で話をして友情が芽生える。大混乱の船の中で「おれになにかあったら、これを故郷の子供に」ドカーン「お前は行け!ここは俺の持ち場だ」の辺り泣けたね。ふたりともハンサムで、腕つかみ合って戦ってるシーンはまあもえました。その後整列してる時にお互い目を見かわし合っちゃって、まったくもう。そうなのか。そうなんだな。何が。

しかしタイタニックの時も二次大戦の海軍の時もそうだけど、機関室勤務というだけで「あかん」と思ってしまう。ボイラーは必ず爆発するものなんでしょうかね。台風が来てるなら港でおとなしくしててよ…

ここまででわかるでしょうが、あらすじを聴いてあなたが想像したのと大差ない映像だと思います。意外性とか、どんでん返しとかは全くありません。でも、よくある場面であっても細部まで丁寧にきちんと作っているので、不満はなく、「うん、うん」とうなずいて観られる映画でした。時間があったら観てみて。

面白いことがひとつあって、後半の現代パートで、テヘランで孤立した日本人グループの中に永島敏行が居るんですが、「JALは安全が確保できない限り飛行機を飛ばさないそうだ」とか苦々しく話している。沈まぬ太陽で永島敏行は国民航空(JALのこと)に勤務していて、上に盾突いたせいでテヘラン支店に飛ばされている支店長なのである。あの人だな、とひとりで納得しておりました。良かったなシマヅ。トルコ人の温かい心のお陰で日本に帰れるぞ。ついでにオンチも連れて帰ってやれ。