GRJ日記

サイトの日記代わりです。やや古いマンガやや古いアニメやや古い特撮(略)大好き。

ヤシャ

好きな漫画の話をします。

ハヤトコウジ氏が月刊少年ジャソプに連載していた漫画です。

私は単行本を持っていたのですが連載の時と単行本では随分違うらしい。

単行本のラストでさえ随分はしょった感満載だったのに、そうしたら連載の時なんてどれだけ無理やりな展開だったのだろう。意味通じたんだろうか。

時代は未来、おそらく核戦争後の荒廃した世界が舞台で、例によって秩序は乱れ、犯罪者が野にあふれている。とてもとても警察だけで取り締まれる状態ではないので、一般人にも犯罪者を捕まえて金を得る賞金稼ぎをする人間が居る。ソーニャという娘もその一人なのだが、正直そんなに強いわけではなく、逆に賞金首に自分の得物である麻酔針を刺されて動けなくなり乱暴されそうになる。そこを助けてくれた少年がヤシャです。

いつもはニコニコして可愛い少年なのだが戦う時にはそれこそ夜叉のような恐ろしい形相になる。その顔は父親譲りであり、父親は史上最強に強く無慈悲で少年の母を無理やりやらかして出来た子供が彼である。父の名は範馬勇次郎。というのは冗談ですけれども。

父はとにかくものすごい剣の達人で、あんまり強くなりすぎて、ちょっとこう…無我の境地というか禅問答というのか、「こうすれば、こうなる」ためのことわり、図式が全部わかってしまった。相手から斬られに近寄ってこさせるとかお茶の子さいさい。うんと強い人が相手の気をのんでヘビに睨まれたカエル状態にしてしまいますけどあれの極端な感じですかね。

とりあえず話の太い芯は、ヤシャ少年がその化け物みたいな父親に挑むということです。一度手ひどく負けて記憶まで奪われ、でもいろんな人の助けやソーニャの愛によって再び挑み、はっきり決着のつく書き方はしてないんだけど、ヤシャがソーニャのもとに戻ってきたシーンでラストなので多分勝ったのでしょう。良かったね。

でもその途中、今チラリと言いましたが幾人もの人間が彼に関わり、彼のために命を落としていくわけです。バルゴという子可哀想だったなあ。あとなんといってもシウジさんという剣士の生き様と死に様がしんどかった。

彼は剣士としてとてもとてもヤシャにはかなわないというのがわかっていて、それは彼にとって悔しくひどい屈辱であるのだが、最期の彼はそのことを突き抜けていた。自分はヤシャにはかなわないけれどもそれはもうどうでもいい。今ここでたった一人戦える人間として、ひたすら扉の前に立ちはだかって敵を食い止める、それだけをしおおせて、満足して死ぬ。ソーニャに言う「幸せになりなよ」という言葉があとあとまで彼女の口からいろんな形でリフレインされるのがとても効果を上げていて、そのたびにシウジさんの意思と遺志とを思い出しました。

ヴァーユさんもね…可哀想っていうかなんていうか。とてもきれいな男の人で、ヤシャの父に心酔しきっていて、身も心も捧げている(笑)ヤシャの父は自分に立ち向かってくる強い力のみに興味があるので、彼のために必死で働くヴァーユさんですがどうにも蚊帳の外。

最後は「いっそあなたの手で殺してください」と言って、彼にキスをしてから斬り殺される。「幸せでしたがつろうございました」と言ってしんでおられた。んー、ススんでるー(笑)

彼の忠臣ぶりは理解可能!な人が居るでしょうがね…ヴァニラアイスとか吾郎さんとか。夫が「ヴァーユは可哀想だ、綺麗な女なのに」と言うのであれは女ではないと教えたところ「男なのか。じゃあ可哀想じゃない。気持ち悪い」とキッパリ言われてしまい大変ウケました。気持ち悪いそうですよヴァニラさんに吾郎さん…

描いている間に時間が結構経ったのでしょう、最初と最後で大分絵柄が違うし、単純に絵が上達されていて、ラストの、嬉し泣きの顔を見せまいと背を向けるソーニャの頭にぽんぽんと手を置いてやるヤシャのシーンがとてもきれいで、胸が温かくなりました。このお話は彼女の成長のお話でもありましたからね。頑張って頑張って頑張った彼女へのご褒美だ。

ソーニャさん幸せになってね、そしてシウジさんの言葉を成就してください。

ハヤトコウジ氏の作品ではあとブレスオブファイアのコミカライズものを読みましたがこれもとても楽しくて勇気と友情が熱くて面白かった。

ディースさんというものすごい長生きの蛇の下半身をした大魔法使いがいるのですが、この方はもともとのゲームにも出て来ていた。自分だけが残り、一緒に冒険した友たちがどんどん歳をとっていなくなっていって、彼らの子孫が自分の前に現れるのって、考えてみるととてもしんどいであろうなと思うのですが、そういった超越性というか達観性というか、を湛えた美しい人の魅力がよく表れた絵柄でした。

まあ時々見かけますが、もはや自分は元の世界に戻れないかも知れないけど、でも今出来ることを精一杯する!と決意し突き進む姿って、感動するよね。自分には出来ないからだろう。

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